一般社団法人 全国青果卸売市場協会



令和元年度事業計画

 わが国経済は、景気回復期間が「いざなぎ景気」を超え、緩やかな回復基調が続いていると公表しているが、その経済効果の浸透には地域や職種によって大きな差があり、景気回復が実感できないという声もある。
 また、国外に目を向けると米中の易摩擦の激化を始めとした、自国優先の主張や保護主義の台頭など、世界情勢が混迷を深める中、我が国を取り巻く環境も複雑化してきている。
 昨年は7月の西日本豪雨や台風21号、北海道胆振東部地震など大きな災害が多発したが、熊本地震や東日本大震災の被災地は、復旧・復興への取組も加速度的に進展してきており、道路・鉄道等も順次復旧しつつある。更に、東京電力福島原子力発電所事故による青果物の出荷制限品目等も徐々に解除されてきている。
 このような情勢の中で、青果業界を取り巻く情勢は、少子高齢化に伴う人口減少の進展による食料消費の量的変化、社会構造の変化に伴う消費者・実需者ニーズの多様化、農産物の国内生産・流通構造の変化など大きく変化してきているものの、異常気象の影響や高齢化に伴う生産農家の減少が、青果物の生産減・単価高となり、近年の我々地方青果卸売業界の取扱高は平成24年度を底に伸びつつあるが、直近では、暖冬の影響もあり足踏みをしている。
 昨年、改正卸売市場法が公布され、来年2020年の6月21日に施行されることとなった。今後、国の関与は必要最小限に止めるとしており、今年は、我々地方卸売市場にとって、これまでにない大変革の年となることが想像されるが、取引の実情に応じて、卸売市場の活性化を図るために、どのような取引を行っていくのか議論を行っていく必要がある。
 しかし、卸売市場法等がどのように見直しが行われようとも、地方卸売市場はこれまで同様に、産地市場としての強みを活かした経営戦略を基に、生産者手取り向上と自らの強い経営づくりの為に行動を起こすことが大切になってくる。
 また、本年10月から消費税の軽減税率制度が導入されることとなるが、10月の制度開始に向け、今後しつかりと準備していかなければならない。
 そのための関連情報を収集し会員へ提供を行うとともに、地方卸売市場にとって明るい展望が開けるように前向きに取り組んでいくこととする。
 更に、全国魚卸売市場連合会(以下「全魚卸」という)は、現在事務局を東京都北区(専務理事の自宅)に置いているが、事務局体制の強化や運営の面から独立した事務所を設け、会員に対する情報発信や連絡調整を密に行う必要があることなどから、全青協の事務所に併設できないかとの検討依頼を受け、検討の結果、全魚卸の事務局を全青協事務局に併設し、専務理事と職員を兼務して、全魚卸のこれまでの実施事業を継続するとともに、全青協にとっても経費の削減が可能であり、両団体の運営が可能であるとの合意に至った。この体制は、本年度の全青協定時総会及び全魚卸通常総会での承認を経て活動を進めていく。
 引き続き地方卸売市場が青果物の安定供給の使命を果たし、青果物流通の中核的地位を確保していくためには、食に対するニーズの変化への的確な対応や消費者の安全・安心への信頼確保、鮮度保持などの品質管理の高度化などに取り組むとともに、地域農業の振興を支援し、自らの経営の健全化と活力ある市場流通の形成に積極的に取り組むものとして、下記の諸事業を重点的に実施する。

  1. 活動の重点
    (1) 改正卸売市場法に関する情報収集に努めるとともに、卸売市場の認定基準を含めて具体的な取扱ルールに対して地方卸売市場として積極的に対応する。
    (2) 地方卸売市場の施設整備の予算措置及び交付対象施設・交付率等の充実を国に要望する。
    (3) 卸売業者の経営体質の強化と市場活性化に向けて、統合・合併、業務提携等による体力強化を図るとともに公正・効率的な売買取引確保に努めるものとする。
    (4) 地域農業の振興を支援し、地域に密着した地場流通の要となる流通モデルの構築に全力を傾注する。

  2. 恒常的事業の継続実施
    (1) 全国大会開催事業
     生産者と消費者の結節点に位置する卸売市場が、市場を取り巻く流通環境の変化や消費者ニーズの変化に的確に対応し、卸売市場に課せられた社会的使命を果たすため、会員及び会員傘下の卸売市場が一堂に会し、卸売市場が取り組むべき課題等について討議しこれを実践する。本年度は大阪府堺市において開催する。
    (2) 調査研修事業
    @ 全青協・市場活性化研究会
     卸売市場を取り巻く環境の変化に対応し、卸売市場の活性化・発展方策、経営健全化方策を研究するため、市場活性化研究会を開催する。
     なお、本年は改正卸売市場法に基づく卸売市場の認定基準及び具体的な取扱ルールについて研究を深め、卸売市場における課題、活性化の方向等を検討する。
    A 食品等物流業務効率化事業
     農産物等の物流におけるパレットの導入を促進するため、生産者・生産者団体、農産物等の流通事業者、物流事業者等の関係者が連携して、共同でパレットの利用・管理等を行うためのルールや運用手法を策定し、これに基づく運用実証及び導入普及の取り組みを推進するため、(一社)農産物パレット推進協議会に参画。共同利用・管理のためのルールや運用手法については、運用実証を行う中で判明した課題等を踏まえ、より効率的かつ効果的なものに改善すると共に、全国的な取組となるよう普及活動を行う。これにより荷待ち・荷受け時間等について平成32年までに30%の削減を目指す。
    B 全国地方卸売市場等青果卸取扱高調査事業
     地方卸売市場の基礎資料とするため、前年度に引き続き、(株)農経新聞社と共同で青果卸売会社の取扱高について調査を実施する。
    (3) 情報化推進事業
     青果物取引に情報化を推進し取引の迅速化、事務処理の合理化を図り消費者ニーズに即した新鮮で多種多様な青果物を安定的に供給する。
    @ 青果物流通情報処理協議会及びベジフルネット利用者協議会
     青果物流通情報処理協議会に参画し、卸売市場取引において日々発生する出荷情報や売立て・仕切情報の交換、受発注、代金決済など、電算処理の合理化を図るための青果物統一品名コードの設定を行う。
     また、ベジフルネット利用者協議会は、平成30年10月から第4期システムに移行したが、平成35年からスタートする第5期開発検討部会を平成30年11月16日に開催し、検討部会の進め方、第5期検討スケジュール、現状の課題等について検討した。
     引き続き、検討委員会、理事会に参画し、検討状況を踏まえて、ベジフルネットの第4期システムの円滑な推進とともに、第5期システム開発の検討が円滑に取り進められるように対応する。
    A 生鮮取引電子化推進協議会
     生鮮取引電子化推進協議会((公財)食品等流通合理化促進機構)は、生産から卸、仲卸、小売までを含めた流通全体の情報化を推進するため、設定した青果共通商品コードやEDI標準メッセージに、青果物流通情報処理協議会の青果物統一品名コード等を採用していることから、生鮮取引電子化推進協議会との連携を密にして青果物流通全体の取引の迅速化、事務処理の合理化を推進する。
    B 全青協ホームページの維持管理
     青果物統一品名コード、機関誌の発行情報、大会・総会・理事会のお知らせ、研究会の報告等、全青協の動きを適時発信する。
    (4) 卸売市場調査研究助成事業
     会員が卸売市場の活性化等に関する委員会、検討会、研究会の開催、及び卸売市場の役職員の資質の向上を目的とした勉強会、研修会、講演会の開催、並びに消費者等を対象として行う食のイベント、表示等に関する講演会、市場と市民の交流会等の開催に要する経費の一部を助成する。
    (5) 機関誌刊行事業
     卸売市場の取引の適正化、経営の健全化等に関する取組を促進するため、卸売市場の近代化、青果物流通の近代化等に関する情報を内容とする機関誌「全青協」を発行する。
    (6) 福利厚生事業
    @  卸売市場の従業員の福利厚生に資するため、労災上乗せ補償制度への加入促進及びグループ保険・団体総合生活補償保険への加入促進に努める。
    A  確定拠出年金制度については、生鮮基金解散後の後継制度として、平成28年10月1日から全青協を代表事業主として制度運用を開始し、平成30年10月1日から個人が掛け金を設定できるマッチング制度を導入。引き続き適正な運営に取り組むと共に、卸売市場の従業員の福利厚生に資するため、加入促進に努める。

  3. その他の事業
    (1) 市場近代化事業
    @ 卸売市場施設整備に係る融資制度
     卸売市場施設及び卸売業者の業務の近代化、並びに卸売市場の機能高度化を図るために必要な施設整備について、株式会社日本政策金融公庫食品流通改善資金の活用を推進する。
    A 食品販売業近代化事業に係る構造改善計画の策定
     会員傘下の卸売市場が、(公財)食品等流通合理化促進機構の「食品等流通合理化緊急対策事業」(リース方式等による設備・機器の導入)を活用して卸売市場の近代化を行う場合には、事業実施に必要な構造改善計画の策定、農林水産大臣への申請等の事務を行う。
    (2) 食品産業優良企業表彰事業
     会員傘下の卸売市場が、(公財)食品等流通合理化促進機構の実施する「食品産業優良企業表彰事業」に申請する場合には、必要な推薦書の作成、受賞申請等の事務を行う。

  4. その他
    (1)  地方卸売市場の優良事例の収集に努め、事例集を作成し、会員企業への啓発に資する。
    (2)  改正卸売市場法及び関連する情報収集に努める。
    (3)  消費税増税時に導入する軽減税率制度に関する情報の収集・発信に努める。
    (4)  卸売市場関係予算の確保、税制適用延長等に努める。
    (5)  青果物の放射性物質の検査結果及び出荷制限の指示等の迅速な提供に努めるとともに、東京電力福島原子力発電所事故に係る損害賠償等の情報収集に努める。


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