平成29年度事業計画

わが国経済は、アベノミクスが実感できるような十分な景気の回復には至っていない。更に、「米国第一」を標榜するトランプ米国大統領、英国のEU離脱決定など保護主義の台頭があり、今後の日本経済への波及を考えると不安はある。

しかし、熊本地震や東日本大震災の被災地は、道路・鉄道等も順次復旧しつつあり、東京電力福島原子力発電所事故による青果物の出荷制限品目等も、徐々に解除されてきている。

このような情勢の中で、青果業界を取り巻く情勢は、少子高齢化に伴う人口減少の進展による食料消費の量的変化、社会構造の変化に伴う消費者・実需者ニーズの多様化、農産物の国内生産・流通構造の変化など大きく変化してきているものの、天候不順や高齢化に伴う生産農家の減少が、青果物の生産量の減、そして単価高となり、最近の我々地方青果卸売業界の取扱高は、平成24年度を底に伸びつつある。

政府は、昨年11月、農林水産業・地域の活力創造本部(本部長:内閣総理大臣)において、「農業競争力強化プログラム」を決定した。その中の“生産者が有利な条件で安定取引を行うことができる流通・加工の業界構造の確立”では、中間流通(卸売市場関係業者など)については、抜本的な合理化を推進することとしている。特に、卸売市場については、経済社会情勢の変化を踏まえて、卸売市場法を抜本的に見直し、合理的理由のなくなっている規制は廃止する、としている。

このように卸売市場のあり方自体を見直す動きが明らかになる中で、本年は地方卸売市場にとっても重要な変わり目の年になると考えられる。取分け、個人生産農家と共にある地方卸売市場にとっては、極めて大きなチャンスの年になるとも考えられるが、そのための関連情報を収集し会員へ提供を行うとともに、地方卸売市場にとって明るい展望が開けるように前向きに取り組むこととする。

また、そのような中にあっても、引き続き地方卸売市場が青果物の安定供給の使命を果たし、青果物流通の中核的地位を確保していくためには、食に対するニーズの変化への的確な対応、消費者の安全・安心への信頼確保、鮮度保持などの品質管理の高度化などに取り組むとともに、地域農業の振興を支援し、自らの経営の健全化と活力ある市場流通の形成に積極的に取り組むものとして、下記の諸事業を重点的に実施する。

  1. 活動の重点
    (1)  国の「農業競争力強化プログラム」に係る具体的施策に対して地方卸売市場として関心をもち積極的に対応する。
    (2)  消費者の求める食の安全・安心に対応するため、青果物の品質管理の高度化に資する施設整備の予算措置を引き続き国に要望する。
    (3)  卸売業者の経営体質の強化と市場活性化に向けて、統合・合併、業務提携等による体力強化を図るとともに公正・効率的な売買取引確保に努めるものとする。
    (4)  地域農業の振興を支援し、地域に密着した地場流通の要となる流通モデルの構築に全力を傾注する。

  2. 恒常的事業の継続実施
    (1) 全国大会開催事業
     生産者と消費者の結節点に位置する卸売市場が、市場を取り巻く流通環境の変化や消費者ニーズの変化に的確に対応し、卸売市場に課せられた社会的使命を果たすため、会員及び会員傘下の卸売市場が一堂に会し、卸売市場が取り組むべき課題等について討議しこれを実践する。本年度は三重県志摩市において開催する。
    (2) 調査研修事業
    @ 全青協・市場活性化研究会
     卸売市場を取り巻く環境の変化に対応し、卸売市場の活性化・発展方策、経営健全化方策を研究するため、市場活性化研究会を開催する。
    A コンテナ流通普及研究会
     生産者の出荷コストの低減、物流の効率化、環境負荷の軽減等に優れた特性を持つ通い容器(プラスチック製コンテナ)の普及や荷積み・荷下ろし時間の短縮等に効果が大きいパレット等の利用促進を図り、物流コストの低減及びトラックドライバー不足への対応について検討を行い、国民の食生活に不可欠な青果物の安定供給を図る。
     また、引き続き使用済み通い容器の早期回収に向けた取組について、関係者による使用済み通い容器の早期回収に向けた啓発活動や市場ごとに回収日を設定し一斉回収を実施する。
    B 全国地方卸売市場等青果卸取扱高調査事業
     地方卸売市場の基礎資料とするため、前年度に引き続き、(株)農経新聞社と共同で青果卸売会社の取扱高について調査を実施する。
    (3) 情報化推進事業
     青果物取引に情報化を推進し取引の迅速化、事務処理の合理化を図り消費者ニーズに即した新鮮で多種多様な青果物を安定的に供給する。
    @ 青果物流通情報処理協議会及びベジフルネット利用者協議会
     青果物流通情報処理協議会に参画し、卸売市場取引において日々発生する出荷情報や売立て・仕切情報の交換、受発注、代金決済など、電算処理の合理化を図るための青果物統一品名コードの設定を行う。
     また、ベジフルネット利用者協議会は、平成30年10月1日から第4期システムに移行するにあたり、平成28年9月、ベジフルネットシステム第4期に向けたシステム改善対応等について、利用者へのアンケートを実施した。平成29年3月、ベジフルネット利用者協議会検討委員会、理事会を開催し、アンケート結果に基づく改善案について検討が取り進められることから、検討委員会、理事会に参画し、検討状況を踏まえて、ベジフルネットの第4期システム開発・改修等が円滑に取り進められるように対応する。
    A 生鮮取引電子化推進協議会
     生鮮取引電子化推進協議会((公財)食品流通構造改善促進機構)において生産から卸、仲卸、小売までを含めた流通全体の情報化を推進するため設定された青果共通商品コードやEDI標準メッセージに、青果物流通情報処理協議会において設定した青果物統一品名コード等が採用されていることから、同協議会との連携を密にして青果物流通全体の取引の迅速化、事務処理の合理化を推進する。
    B 全青協ホームページの維持管理
     青果物統一品名コード、機関誌の発行情報、大会・総会・理事会のお知らせ、研究会の報告等、全青協の動きを適時発信する。
    (4) 卸売市場調査研究助成事業
     会員が卸売市場の活性化等に関する委員会、検討会、研究会の開催、及び卸売市場の役職員の資質の向上を目的とした勉強会、研修会、講演会の開催、並びに消費者等を対象として行う食のイベント、表示等に関する講演会、市場と市民の交流会等の開催に要する経費の一部を助成する。
    (5) 機関誌刊行事業
     卸売市場の取引の適正化、経営の健全化等に関する取組を促進するため、卸売市場の近代化、青果物流通の近代化等に関する情報を内容とする機関誌「全青協」を発行する。
    (6) 福利厚生事業
    @  卸売市場の従業員の福利厚生に資するため、労災上乗せ補償制度への加入促進及びグループ保険・団体総合生活補償保険への加入促進に努める。
    A  確定拠出年金制度については、全青協が代表事業主として申請した「全国生鮮企業型年金規約」が、平成28年8月25日付で関東信越厚生局長から承認され、平成28年10月1日から制度運用を開始した。引き続き適正な運営に取り組むと共に、卸売市場の従業員の福利厚生に資するため、加入促進に努める。

  3. その他の事業
    (1) 市場近代化事業
    @ 卸売市場施設整備に係る融資制度
     卸売市場施設及び卸売業者の業務の近代化、並びに卸売市場の機能高度化を図るために必要な施設整備について、株式会社日本政策金融公庫食品流通改善資金の活用を推進する。
    A 食品販売業近代化事業に係る構造改善計画の策定
     会員傘下の卸売市場が、(公財)食品流通構造改善促進機構の「食品流通構造改善緊急対策事業」(リース方式等による設備・機器の導入)を活用して卸売市場の近代化を行う場合には、事業実施に必要な構造改善計画の策定、農林水産大臣への申請等の事務を行う。
    (2) 食品産業優良企業表彰事業
     会員傘下の卸売市場が、(公財)食品流通構造改善促進機構の実施する「食品産業優良企業表彰事業」に申請する場合には、必要な推薦書の作成、受賞申請等の事務を行う。

  4. その他
    (1)  卸売市場法改正に関する情報収集に努める。
    (2)  「農業競争力強化プログラム」に関連する情報収集に努める。
    (3)  消費税増税時に導入する軽減税率制度に関する情報の収集に努める。
    (4)  卸売市場関係予算の確保、税制適用延長等に努める。
    (5)  青果物の放射性物質の検査結果及び出荷制限の指示等の迅速な提供に努めるとともに、東京電力福島原子力発電所事故に係る損害賠償等の情報収集に努める。


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