平成28年度事業計画

昨年のわが国経済は、大企業を中心として過去最高の収益を上げる中、景気は緩やかな回復基調が続いていると政府は発表しているが、その恩恵は地方には及んでいない。今後の日本経済の先行きは、米国の利上げ、中国経済の減速及び原油価格の大幅下落を背景とした世界経済の景気後退への懸念等や、昨年大筋合意に至ったTPP協定交渉の結果、野菜・果物等の関税がほぼ全廃となるなど、協定発効後に想定される海外の安価な農産物の流入の影響は楽観できる状況ではない。加えて、消費税率10%への再引上げ (平成29年4月)と同時に導入する軽減税率の対象品目には、酒類及び外食を除く飲食料品とされているが、その運用詳細は明らかに示されておらず、事業者が被る徴税のための過重な事務的負担が懸念されている。

一方、東日本大震災から5年経過した被災地は、道路・鉄道等のインフラが徐々に復旧してきているものの、東京電力福島原子力発電所事故による放射性物質に汚染された青果物の出荷制限品目・自粛品目は、徐々に解除が行われてきているものの今なお残っている。

このような情勢の中で、青果業界を取り巻く情勢は、少子高齢化に伴う人口減少の進展による食料消費の量的変化、社会構造の変化に伴う消費者・実需者ニーズの多様化、農産物の国内生産・流通構造の変化など、大きく変化してきており、我々地方青果卸売業界の取扱高はここ20年間で約4割も減少し、26年度においては前年度比マイナスとなったばかりか、実質消費税増加分も確保できない厳しい状況となっている。

農林水産省は、平成28年1月、第10次卸売市場整備基本方針を公表した。その中身をみると、中央卸売市場における中央拠点市場は廃止されたが、地方卸売市場については、集荷力低下傾向を踏まえ、地域における重要な役割を担う地域拠点市場を定めることや、市場強化のため、他市場との統合・連携等の取り組みが求められている。

こうした中で、地方卸売市場が青果物の安定供給の使命を果たし、青果物流通の中核的地位を確保していくためには、食に対するニーズの変化への的確な対応、消費者の安全・安心への信頼確保、鮮度保持などの品質管理の高度化などに取り組むとともに、地域農業の振興を支援し、自らの経営の健全化と活力ある市場流通の形成に積極的に取り組むものとして、下記の諸事業を重点的に実施する。

  1. 活動の重点
    (1)  国の「第10次卸売市場整備基本方針」に係る具体的施策に対して、地方卸売市場として関心をもち適宜対応する。
    (2)  消費者の求める食の安全・安心に対応するため、青果物の品質管理の高度化に資する施設整備の予算措置を引き続き国に要望する。
    (3)  卸売業者の経営体質の強化と市場活性化に向けて、統合・合併、業務提携等による体力強化を図るとともに公正・効率的な売買取引確保に努めるものとする。
    (4)  地域農業の振興を支援し、地域に密着した地場流通の要となる流通モデルの構築に全力を傾注する。

  2. 恒常的事業の継続実施
    (1) 全国大会開催事業
     生産者と消費者の結節点に位置する卸売市場が、市場を取り巻く流通環境の変化や消費者ニーズの変化に的確に対応し、卸売市場に課せられた社会的使命を果たすため、会員及び会員傘下の卸売市場が一堂に会し、卸売市場が取り組むべき課題等について討議しこれを実践する。本年度は福島県郡山市において開催する。
    (2) 調査研修事業
    @ 全青協・市場活性化研究会
     卸売市場を取り巻く環境の変化に対応し、卸売市場の活性化・発展方策、経営健全化方策を研究するため、市場活性化研究会を開催する。
    A コンテナ流通普及研究会
     生産者の出荷コストの低減、物流の効率化、環境負荷の軽減等に優れた特性を持つ通い容器(プラスチック製コンテナ)を本格的に普及し、青果物供給コストの縮減による国民の食生活に不可欠な青果物の安定供給を図る。
    「全国流通モデル」、「地域流通モデル」の実践
     青果物コンテナ流通普及研究会において、使用済み通い容器の紛失をいかに防止するか、及び卸売会社が主体となって実施することに重点をあて構築したコンテナ流通モデルを各卸売市場で実践し効果を再評価する。
    使用済み通い容器の早期回収に向けた取組
     関係者による使用済み通い容器の早期回収に向けた啓発活動や市場ごとに回収日を設定し一斉回収を実施する。
    B 全国地方卸売市場等青果卸取扱高調査事業
     地方卸売市場の基礎資料とするため、前年度に引き続き、(株)農経新聞社ト共同で青果卸売会社の取扱高について調査を実施する。
    (3) 情報化推進事業
     青果物取引に情報化を推進し取引の迅速化、事務処理の合理化を図り消費者ニーズに即した新鮮で多種多様な青果物を安定的に供給する。
    @ 青果物流通情報処理協議会及びベジフルネット利用者協議会
     卸売市場取引において日々発生する出荷情報や売立て・仕切情報の交換、受発注、代金決済などの事務処理をコンピュータシステムを使って合理化を図るため、青果物流通情報処理協議会において青果物統一品名コードの設定を行う。
     また、ベジフルネット利用者協議会において出荷団体と卸売会社間で交換するメッセージ(青果物に関する諸帳票の様式及びデータフォーマット)については、平成25年10月1日から第3期システムに移行しており、この新システムによる商取引が円滑に運営されるよう適切に対応する。
    A 生鮮取引電子化推進協議会
     生鮮取引電子化推進協議会((公財)食品流通構造改善促進機構)において生産から卸、仲卸、小売までを含めた流通全体の情報化を推進するため設定された青果共通商品コードやEDI標準メッセージに、青果物流通情報処理協議会において設定した青果物統一品名コード等が採用されていることから、同協議会との連携を密にして青果物流通全体の取引の迅速化、事務処理の合理化を推進する。
    B 全青協ホームページの維持管理
     青果物統一品名コード、機関誌の発行情報、大会・総会・理事会のお知らせ、研究会の報告等、全青協の動きを適時発信する。
    (4) 卸売市場調査研究助成事業
     会員が卸売市場の活性化等に関する委員会、検討会、研究会の開催、及び卸売市場の役職員の資質の向上を目的とした勉強会、研修会、講演会の開催、並びに消費者等を対象として行う食のイベント、表示等に関する講演会、市場と市民の交流会等の開催に要する経費の一部を助成する。
    (5) 機関誌刊行事業
     卸売市場の取引の適正化、経営の健全化等に関する取組を促進するため、卸売市場の近代化、青果物流通の近代化等に関する情報を内容とする機関誌「全青協」を発行する。
    (6) 福利厚生事業
    @  卸売市場の従業員の福利厚生に資するため、労災上乗せ補償制度への加入促進及び全青協団体定期保険への加入促進に努める。
    A  全国生鮮食品等卸売業厚生年金基金は、解散に伴う後継制度として、確定拠出年金制度を加入事業所に提示するとともに、その事務局を全青協が行うことが適当とした経緯から、全青協は今年度を初年度として確定拠出年金制度における代表事業主としての所要の手続きを取り進める。なお、制度発足は10月1日を予定しており、必要経費は参加事業主の負担とし、収支を明らかにするために特別会計を設ける。

  3. その他の事業
    (1) 市場近代化事業
    @ 卸売市場施設整備に係る融資制度
     卸売市場施設及び卸売業者の業務の近代化、並びに卸売市場の機能高度化を図るために必要な施設整備について、株式会社日本政策金融公庫食品流通改善資金の活用を推進する。
    A 食品販売業近代化事業に係る構造改善計画の策定
     会員傘下の卸売市場が、(公財)食品流通構造改善促進機構の「食品流通構造改善緊急対策事業」(リース方式等による設備・機器の導入)を活用して卸売市場の近代化を行う場合には、事業実施に必要な構造改善計画の策定、農林水産大臣への申請等の事務を行う。
    (2) 食品産業優良企業表彰事業
     会員傘下の卸売市場が、(公財)食品流通構造改善促進機構の実施する「食品産業優良企業表彰事業」に申請する場合には、必要な推薦書の作成、受賞申請等の事務を行う。

  4. その他
    (1)  青果物の放射性物質の検査結果、出荷制限の指示等の原発事故関連情報の収集、迅速な提供に務めるとともに、東京電力福島原子力発電所事故に係る損害賠償を円滑に進めるため、損害賠償請求書様式の統一などに努める。
    (2)  中央卸売市場から地方卸売市場への転換等の卸売市場関連情報の収集及びその対応について検討を進める。
    (3)  卸売市場関係予算の確保、税制適用延長等に努める。
    (4)  消費税増税時に導入する軽減税率制度に関する情報の収集に努める。


関係書類の閲覧

事業計画と収支予算書を閲覧できます。
下記のリンクをクリックしてください。

平成28年度事業計画